安藤杳子の本の話。

お部屋の中からこんにちは。

行動する鷹と、行動しない蜜|『万延元年のフットボール』大江健三郎

緊急事態宣言下のいまは、「自粛」を「要請」され「行動しないこと」が要求される。「行動しない」というのは、実は痛みをともなうということが、この1年間のうちによくわかった。昨年の初めての緊急事態宣言から言われている「自粛疲れ」がそうだ。そして、…

ある晴れた日の断章(『ポートレート・イン・ジャズ』『万延元年のフットボール』『ダンス・ダンス・ダンス』)

万延元年のフットボール。一年以上かけて読んでいる。再読だ。いつになったら読み終わる?大江健三郎のねちっこいほどの文章。生きた茎を切ったときの粘液のようだ。それがまた癖になるんだけれども。 * 最近は村上春樹の『ポートレート・イン・ジャズ』を…

小指と木曜日

左手の小指を 塩漬けにした レモンが決め手よ。 日曜日の午後 風と日光と気だるさの中、 わたしはそれを 料理した 白い台所で 冷蔵庫にしまわれた それは あの息苦しい木曜日には 見事な出来ばえとなって わたしに素敵な時間を ふるまってくれるだろう

飛んでる鳥の影はどこ?

暑くなって来ましたね。 普通のことを書きたくなって書いています。 今日は用事で、姫路へ行っていました。 本屋へ寄って、『吉行淳之介ベストエッセイ』を持って、カフェへ。 ピオレの3階?のカフェでぼんやり駅前の通りを見ていました。 普段着の人、仕事…

『CARVER'S DOSEN レイモンド・カーヴァー傑作選』村上春樹訳

レイモンド・カーヴァーの小説は、高校生の時に熱中していた。ちょうど、3年生の部活の引退間際の頃で、最後の大会(陸上部だった)に出場するため宿泊していたホテルで読んだ思い出がある。 一言で言うと、そんな重要な日の前夜に熱中して読むような教訓は…

価値ってなんだろう 『反哲学入門』 木田元

大学以来の再読でした。 最近ふつふつと哲学熱が再燃しています。 自分の整理のためにも少しだけあらすじを。 プラトン/アリストテレス以来、西洋は「超自然的思考」になり、それが「哲学」であると作者は語ります。 プラトンが、「イデア界」という、この世…

東海道本線でみた親子の話。

本や映画の話ではないですけれど、ちょっと記憶にある情景を。 大学生のころ、青春18きっぷを握って本州一周をしたことがありました。JR東海道本線でひたすら東に向かうなか、私は近づいてくる富士山の姿を見ようとして、一番前の車両に座っていました。そ…

「ラビング 愛という名前のふたり」〜「古代ギリシア展」 

今日はシネリーブルで「ラビング 愛という名前のふたり」を鑑賞。 この映画は、アメリカで初めて異人種間の結婚が裁判で認められるまでの実話を元にしたものでした。理不尽だと憤りながらも、なぜ違法なのか?と権利を強く主張するためではなく、あくまで「…

詩と科学

中谷宇吉郎の『科学以前の心』を読みました。中谷宇吉郎さんは世界で初めて人工雪をつくった科学者です。エッセイも有名で、彼のことは高野文子の『ドミトリーともきんす』で知りました。 自然科学の本は、たまに読むとすごく面白いです。難しい理論は抜きに…

昨日は/あしたのおとといで おとといのあしたや 村上春樹『女のいない男たち』 

3回目の投稿です。 村上春樹の『女のいない男たち』を読みました。 村上春樹の小説は僕が高校生の頃から好きで、気に入った作品を何度も手にとっては繰り返し読んで一字一字を味わっていました。うまく言えないですが、一つひとつの文章をひろうという作業…

文学がデザイン化される時代 by平野啓一郎

3年近く前のことですが、小説家の平野啓一郎さんが、テレビで「文学もデザイン化される時代」と言っていました。当時僕は「デザイン化される」ということが一体どういうことなのか、いまいちわかりませんでした。それでも、この言葉はなんとなく覚えていて、…

安西水丸について

COYOTEという雑誌で安西水丸特集をしていました。 安西水丸を知ったのは村上春樹のエッセイです。 『村上朝日堂』という一連のエッセイ集が大好きで、 自然と挿絵の安西水丸の絵も気に入るようになりました。 安西先生の絵はシンプルだけど、画面いっぱいに…

はじめまして、安藤杳子です!

本ばかり読んでいる生活です。 備忘録的に、読んだ本の感想とか書いていきたいと思っています。